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英国が世界に誇るものはたくさんありますが、 そのうちのひとつが紅茶、そして、それにまつわる文化でしょう。 なかでもアフタヌーンティーは、女性たちの憧れの的。
一流ホテルのティールームでも人気のメニューです。 3段のトレイに美しく盛りつけられたお菓子、 繊細な陶器のカップ&ソーサーでサーブされる薫り高い紅茶。
こんなすてきな機会に恵まれたら、やはりその場にふさわしく、 優雅にスマートにいただきたいものですね。 そこで、スコットランドの食べ物の初めは、
スコットランド式のアフタヌーンティーについて 少しご紹介したいと思います。
日本語で紹介されているアフタヌーンティー関連の本には 「堅苦しいマナーは必要ありません」などと 書かれているものもありますが、とんでもない!
本来、アフタヌーンティーはハイソサエティの習慣なので、 厳しいマナーが決められているのです。
最近はイングランドでも上流階級をのぞいては ゆるやかになっているようですが、 スコットランドは伝統を重んじるお国柄から、 このマナーがいまでもよく守られています。
つまり、スコティッシュ・アフタヌーンティーを きちんと習っておけば、たとえ貴族のお屋敷での アフタヌーンティーに招待されても 自信たっぷりに振舞うことができる、というわけです。
でも、これはダメ、あれもダメというのではありません。 ここで覚えてほしいのは、それらのマナーにこめられた思いやり。 これを知っていると、具体的なひとつひとつの
マナーがきちんと身につけられますから。
では、お気に入りのミルクティーでも飲みながら、どうぞ。
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まず、スコッティッシュ・アフタヌーンティーで いちばん大切にされているのは、“会話”。 それも、ただのおしゃべりではなく、どちらかというと
“建設的な話し合い”に近い感じです。
というのも、スコットランドでのアフタヌーンティーは 地域の婦人会活動のための集まりなど、 “働く場”という意識が強いからです。 そのため、招かれた側がワインやケーキなどの手みやげを
持っていくこともありません。そんなことをしたら、 「あら、あなた、遊ぶつもりできたの?」と 思われても仕方なくなってしまうのです。
ご注意下さい。
さて、第一目的が“会話”だと言われたら、 食べ物がみな一口サイズなのも、もうおわかりでしょう。 そう、おしゃべりするのに口が食べ物でいっぱいでは
都合が悪いからです。
いただくときは、自分の取り皿にひとつだけ取って、 それを一口食べたら、すぐにお茶も一口。 それからまた会話に参加するのです。
テーブルの中央を飾るフラワーアレンジメントにしても、 この“会話”を大切にしているので、 向かいあった人の顔が見えないような高さにまで
活けることは、絶対にありません。 みんなの笑顔を見ながらじゃないと おしゃべりが楽しくないのは、当然ですものね。
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アフタヌーンティーでは上等な食器が使われます。 美しい絵付けの磁器やシルバーのティーセットなどで、
大切なお客さまへの敬意を表すのです。 だから招かれた側もそれらは丁寧に扱いましょう。
お皿の上でナイフをギコギコなんてしたら、 「絵付けに傷がつきそう」ってハラハラされます。 ミルクピッチャーの空中手渡しなんてしたら、
「落とされて割れたらどうしよう」ってドキドキされます。 とくにピッチャーやティーポットなど共同で使うものを 回すときには、取り上げた人がテーブルに置くまで待ってから
次の人がまた取り上げるのがルールです。 こうすれば、割れる心配もずっと少なくてすむでしょう。
また、いくらすてきなカップだからといって、 裏返したり持ち上げて底をのぞいたりして ブランドを確かめるなんて、言語道断! こんな下品なことをされたときには、
招いた人も周りのお客さまも、卒倒してしまいます。 |
もうひとつ、みんなさんがテーブルについているとき、 目に見えない、一人ひとりのテリトリーがあります。
それは、座っているあなたの左側の空間。 右手で行うのはお茶のカップを取り上げるくらいですが、 ケーキのお皿は左側にあり、左腕を動かすことのほうが
はるかに多いからです。
そして、そのテリトリーを越えて “侵略”するのは、とても失礼なことです。
ディナーのときでも、ウェイターがお皿を出したり下げたりと 給仕するのは、左側からでしょう。 右側はあなたの右隣の人のスペースなので、
そこに立って給仕することは許されないのです。
これを知らずになにもかも右手を使っていたりしたら、 右隣の人のテリトリーを犯すことになるので、 大顰蹙を買ってしまいます。 逆に、あなたの左隣の人はあまり右手が使えないので、
けっこう不便です。 だから、いつも左隣の人に気を配り、 お砂糖やミルクが必要なときには回してあげるなど、 お世話してあげることが大切なのです。
それに、右手でカップを持っていると右側を向いて話すのが 体の動きからも自然なので、ついつい、 左側の人には背を向けがちになります。
その点でも注意して左隣の人に積極的に話しかけるよう 気をつけることが、よいマナーなんです。
実は、席順もこの左側のテリトリーを考えて 決められます。たとえば、テーブルの左端に座る人の 右隣には、その人と仲がいい人に座ってもらうなど。
そうすると、左側の人がぽつんと取り残されることなく、 自然に会話が弾みますから。 テリトリーひとつについても奥が深いでしょう。 |
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