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ハイランドゲームズ1− スコットランドの大運動会
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ハイランドゲームズで行われる競技について、 ご説明していきましょう。
まず、この催しでしか見られないのが、ヘビーイベント(重量競技)。 かつてスコットランドでは、力自慢たちが楽しさと仲間意識を強めるために、
定期的に集まって強さを競いあいました。 その力比べの競技がいまに受け継がれて、ヘビーイベントとなったのです。 主に以下のような種類があります。
また、近代オリンピックの陸上競技は、ヘビーイベントからはじまっています。
ケーバー(丸太)投げ Tossing the Caber
ケーバーという丸太を投げる、ハイランドゲームズを代表する競技です。 この競技のミソは、投げた距離を争うのではないというところ。 競技者が空中へ放り投げたケーバーは、その先端が一度地面を打ち、
一回転するように向こう側へ倒れなければなりません。 そして、その倒れたケーバーの角度によって勝敗が決まるのです。
わかりやすいように時計の文字盤を頭に思い浮かべてみましょう。 競技者は12時の位置から、ケーバーの先端が文字盤の中心を打ってから 向こう側の6時の位置目指して倒れるように、投げます。
でもケーバーがきっちり6時の位置に倒れることはほとんどないので、 その位置にいちばん近かった選手が勝者となるというわけ。 「なぁんだ、じゃあ力比べじゃないじゃない」と思っていませんか?
いえいえ、ケーバーを上手に投げること自体に とてつもない腕力が必要なんですよ。
おもり投げ[距離] Throwing the Weight for Distance
取っ手のついたおもりを投げて距離を争います。 おもりを持った競技者は、弾みをつけてより遠くへ投げられるように、 ぐるりと一回転しなければなりません。
取っ手をしっかり握ることが、遠くへ投げるためのコツです。
おもり投げ[高さ] Throwing the Weight Over the Bar
2本の棒の間に渡されたバーを越えるようにおもりを投げ上げ、 高さを競います。ひとりで3回投げることができ、 最高の高さをマークした選手が勝ち。
ハンマー投げ Throwing the Hammer
オリンピックでおなじみのハンマー投げと同じ要領です。 ただし、ハイランドゲームズのハンマーは、 鉄の球に長い木の柄がついたものになっています。
砲丸投げ Putting the Stane
こちらもおなじみのオリンピック種目ですが、 その起源はハイランドゲームズなのです。 もともとは、ほどよく磨り減って投げやすい形になった石を
川床から取ってきて使いました。 ちなみにこの競技、英語では「プッティング・ザ・ステイン」といいますが、 この“ステイン”はスコットランド訛りの“ストーン”のこと。
つづりも“stone”ではなく“stane”と書きます。 |
一方、ダンス競技も、ハイランドゲームズには欠かせません。 スコットランド伝統舞踊のひとつハイランドダンスは、
バグパイプにあわせて、腕をあげながら飛び跳ねるように踊るのが特徴。 現在ではほとんどが女性ダンサーですが、 もともとは男性、とくに兵士の踊りでした。
ハイランドゲームズで競われるダンスの種類には、 主に以下のものがあります。
フリング Fling
兵士たちが出陣前に勝利を祈願して踊ったダンスで、 平らに寝かせた丸い盾の上で、真ん中に突き出した槍の上を 跳び越えながら踊ります。ステップを踏み下ろす位置は
毎回同じ場所でなければなりません。シンプルなステップですが 運動量は多く、現在でも英国軍隊のダイエット体操に取り入れられています。
スウォード Swords
勝利のダンスです。打ち負かした敵から取り上げた剣を2本、 十字の形に地面に置いて勝利のしるしとし、 その十字の上を足が剣に触れないように踊ります。
ショーン・トゥルース Seann Truibhas
このダンスの名前は、ゲール語で「はき古したズボン」という意味。 かつてイングランドと連合化されたスコットランドではキルトの着用が禁じられ、
男性はズボンをはくように強制された時期がありました。 その規制が解かれ再びキルト着用が許されたときに、 それまではいていたズボンをずたずたにして喜びを表したたという動きを
踊りで表現しています。
フラハンHulachan
ハイランドリールというダンスのひとつです。 ある教会で日曜の朝に牧師が現れず、 待っていた礼拝の参加者たちが凍えてしまわないように
足踏みしたり腕を振りまわしたりしたという故事をもとにして、 振りつけやステップが編み出されました。
アイリッシュ・ジグ Irish Jig
アイリッシュダンスといっても、アイルランド特有のものではありません。 スコットランドでも同様に伝統舞踊のひとつになっています。
ホーンパイプ Horn Pipe
フルートのような笛の音にあわせて踊るダンス。 船乗りたちが好んで踊ったので、ロープを放り投げたり、マストに登ったりと 船の上での動きが踊りの中に取り入れられています。
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もうひとつ、ハイランドゲームズで必ず行われるのが、 バグパイプ演奏の競技会。バグパイプの情報で、これは単なる楽器ではなく、
戦場で兵士たちの士気を高めるために用いられた すぐれた武器だったという説明をしています。
そのような歴史があるからこそ、現在でも各競技者の士気を高めるために 当然のこととしてバグパイプの音色が響き渡るのです。
もちろん、競技だけではありません。 参加者全員がキルトをまとってバグパイプを吹き鳴らしながら 堂々と行進する様子は、圧巻です。 さらに、スコットランド以外の国で行われるハイランドゲームズでしか
お目にかかれないセレモニーもあります。 それは、「カーキン・オブ・タータン(Kirking of Tartan)」。 Kirkとはスコットランド語で“教会”という意味で、
“外国”で暮らすスコットランド人たちが、それぞれの氏族のタータンを 持ち寄り、教会の牧師に祝福してもらって 自分たちの家族とふるさとの親族の無事と繁栄を願うというものです。
ここにも、タータンに寄せるスコットランド人たちの プライドと愛情を見ることができます。 毎年秋には、日本でも関東と関西でハイランドゲームズが開催されます。
スポーツの季節、行楽の季節、今年はちょっと趣向を変えて スコットランド風に楽しんでみてはいかがですか? でも、見物だけでは、ダメ。
ハイランドゲームズの鉄則は、全員参加なのです。 大丈夫、短距離走や長靴投げ、綱引きなど、 だれでも気軽にできる競技もたくさん用意されています。 |
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